種類株式での承継対策


種類株式 専門家

事業承継には、後継者を選定・育成し、経営ノウハウや、経営理念を承継していくことが何よりも大切だと思いますが、他にも以下の点について十分に時間をかけて対策を講じていく必要があります。

  1. 自社株式や事業用資産の後継者への集中と遺留分への配慮
  2. 事業承継に際して必要な資金の確保

経営権の承継のひとつとして自社株の承継というものがあります。自社株も財産ですので、財産の承継という面もありますが、ここで問題となるのが相続税です。 

種類株式の活用

中小企業の定款整備・内容確認

中小企業の定款整備をすることで相続発生に備えましょう!

現在の会社法では、「定款自治」を基本理念としています。旧商法と比較すると、飛躍的に会社の規制を緩和しており、会社の自主性を尊重して、会社ごとに合った「その会社独自のルール」をつくることが大幅に認められております。

 

補足的にいうと、定款は法律に書かれている事項だけのものではなく、会社の経営理念や、行動指針や、CSR(企業の社会的責任)などを盛り込むことも可能です。

経営者が亡くなった場合、その経営者が所有していた株式が分散してしまうと、後継者が会社の実権を握れなくなることがあります。また、株主に相続が発生した場合、経営者が全く知らない株主が登場するということも考えられます。こういったときに、定款を整備しておけば、ある程度トラブルを予防することが可能なのです。

 

定款は、分かりやすく言うと、会社と株主との「契約書」みたいなものです。 「定款」をきちんと整備しておかないと、事業を継ぐ後継者の方が思わぬところで会社継続に向けてのトラブルに出あう可能性があります。

 

定款を変更するには、基本的には株主の議決権の3分の2以上の賛成が、内容によっては株主全員の同意が必要になりますので、経営者=所有者のうちに、定款の整備をしておきましょう。たとえば、株式を相続した者から自社の株式を買い取る規定や、特定の株主からだけ株式会社が自社株式を取得し、他の株主には自己株式の買い取り請求をさせない定款変更をするケースがあります。

定款は、経営に直結するツールとして大いに活用することがきるのです。 

種類株式の発行に関して

事業承継に最近良く使われるのが、種類株です。

種類株とは、会社法の規定の範囲内で定款に定めることによって、普通株式と比べて権利が拡大または縮小された特別な株式なので、その影響力がとても大きく、使い方を誤ると毒にもなりますが、使い方しだいではすばらしい効果を発揮します。

 

種類株式は、以下の9つの権利について異なった株式を発行することが可能です。

もちろん、9つの権利のうち、いくつかの権利を重複して付与したり、いくつかの権利を制限または剥奪をした株式を発行することも可能です。

 

 

1. 剰余金の配当についての種類株式

 

普通株式よりも、剰余金の配当に関して優先して多くもらえる株式を「配当優先株式」といい、少なくしかもらえない株式を「配当劣後株式」といいます。会社の経営よりも投資に興味がある株主には、3.の議決権制限を付けた優先株を発行しておけば、経営者の議決権割合を下げることなく資金調達することが可能となります。

 

2. 残余財産の分配についての種類株式

 

会社は解散する場合、残った財産の整理をしなくてはなりません。その残余財産は、基本的には株主へ持株数に応じて平等に分配されます。1.と同様、普通株式よりも、優先的に残余財産を受け取れる株式を「残余財産分配優先株式」、少なくしかもらえない株式を「残余財産分配劣後株式」といいます。活用法は1.と同様です。

 

3. 議決権制限株式

 

議決権の行使を制限する株式です。全ての事項について議決権を制限することも、一定の事項については議決権を行使できないとすることもできます。会社の所有と経営の分離を進めるためのもので、事業承継に際しても、会社の後継者以外の相続人には、1.の優先権のついた議決権制限株式を相続させることで、相続人間の争いを防止し、後継者が安定した経営をすることに役立ちます。

 

4. 譲渡制限株式

 

会社にとって好ましくない者が株主になるのを防ぐため、株式を譲渡する際に、取締役会や株主総会などの承認を必要とする株式のことです。ほとんどの中小企業には定款で、全ての株式につきこの規定が設けられています。一部の株式のみに制限を付けることも可能なので、8.の黄金株などの株式のみ敵対する株主に渡ってしまうことも防ぐことができますし、すべての株式にこの制限をつけておけばM&Aの防衛策となります。

 

5. 取得請求権付株式

 

株主が、会社に対して自分の株式を取得するよう請求できる株式のことで、プットオプション(売る権利)がついた株式です。株式の会社による買い取りを保証することで、株主は将来の制約なく会社に出資できるというメリットがあります。また会社は、資金調達を容易に行えるようになるというメリットがあります。買取対価の柔軟性が多様なスキームの選択肢を与えてくれます。

 

6. 取得条項付株式

 

あらかじめ定めた一定の事由が生じたことを条件に、強制的に会社が株主の所有する株式を取得できる株式のことで、コールオプション(買う権利)が付いた株式です。経営者以外の保有している株式について、相続が発生した場合や、従業員が株主の場合に、その従業員が退職した場合など、会社にとって好ましくない者が株主となる可能性がありますが、そういったことが起きることを条件に会社が取得することができると定めておけば、経営の安定に役立てることができます。また、後継者を決めかねている段階で、後継候補者たちに相続税対策として、現経営者の株式を生前贈与する際に、取得条項付株式を贈与しておけば、将来、後継者が決定したときに、それ以外の者の株式を買い取ることも可能となります。同様に、親族以外の中継ぎ経営者を擁立する必要がある場合も、その中継ぎ経営者にはこの取得条項付株式を取得させておけば、スムーズに親族後継者にバトンタッチすることが可能となります。

 

7. 全部取得条項付種類株式

 

株主総会の特別決議があれば、その株式のすべてを会社が取得できるとする株式です。旧商法時代100%減資をするには株主全員の同意が必要でしたが、新会社法で、株主総会の多数決で円滑に行うことができるように創設されたものです。6.の取得条項付種類株式の場合には、予め定款で取得事由を定めておく必要がある反面、その事由が発生したら、それだけで株主から株式を取得することができるのに対して、全部取得条項付種類株式の場合には、予め定款で取得事由を定めておく必要がない半面、取得にあたって(定款変更の際の特別決議とは別に)株主総会の特別決議を経なければなりません。さらに、取得条項付種類株式の場合には、当該種類株式を有する種類株主のうち一部の者の株式のみを取得することができるのに対して、全部取得条項付種類株式の場合には、当該種類株式を有する種類株主の全てを取得することしか認められていません。

 

8.  拒否権付株式(黄金株)

 

通常、会社の意思決定は株主総会または取締役会の決議でなされますが、この株式を発行している会社では、ある決議事項についてはこれらの決議のほか、黄金株の株主の承認を得なければならないと定めることができます。上場会社でのM&Aの防衛策として活用されることは見聞きされた方も多いでしょう。たった一株で特定の決議を否決できるため、会社にとっては脅威ですが、旧経営者が後見人的立場で新経営者を監督したいときなどに活用することができます。

 

9. 役員選解任権付株式

 

委員会設置会社を除いた非公開会社(すべての株式に4.の譲渡制限規定が設けられている会社)でのみ発行することが可能なもので、この株式を発行している会社は、取締役又は監査役の選任については原則として株主総会ではなく、この種類株式を保有している株主のみで構成される種類株主総会で選任又は解任することができます。合弁会社を設立する場合や、ベンチャー企業がベンチャーキャピタルから出資を受けようという場合には、株主間契約で合意した数の取締役を各派が選任できるように保証する方策として利用されることが考えられます。創業者や一部の株主が、自らの利益を守るため取締役の一部を指名する権利を要求したり、合弁企業において、各出資企業が出資割合に応じて取締役を選任したいというようなニーズにこたえるものである。

 

 

この他にも、みなし種類株式(VIP株、ヒーロー株などと呼ばれています)といって、株式の自由な売買が制限されている(ほとんどの中小企業にはこの制限がつけられています)株式会社に限って、株主の権利のうち利益の配当、残余財産の分配、議決権について、その持ち株数にかかわらず以下のような「株主ごと」に異なる取扱いができるとした「属人的株式」というものも認められております。導入するには、株主総会において総株主の半数以上かつ、総株主の議決権の4分の3以上の賛成が必要となります。

属人的株式は会社の登記簿には記載されませんので、定款を見ない限りはその存在は分かりません。

 

 

1. VIP株

 

特定の地位にある者が保有する株式につき、議決権が異なると定める株式。例えば、代表取締役が保有している株式は、1株について100個の議決権があるなどの規定をすることが可能です。この特徴は、地位を失った場合や、譲渡した場合には、もとの議決権に戻るところです。経営承継する場合に後継者が創業者の株式を買い取る資金が不足する場合でも、一部の買い取れる数の株式をVIP株にすることで迅速な承継が可能となります。

 

2. ヒーロー株

 

一定の事態が生じた場合に議決権が劇的に増加することを定めた株式。通常は、普通の株式だけど、一定の事態(自由に設定が可能)が生じた場合に、そのピンチを乗り切るために設計されます。この条件付のVIP株が、ピンチの時に出現するヒーロー的役割を果たすのがヒーロー株と呼ばれます。

例えば、オーナー社長が認知症・行方不明などの事態となれば、株主総会を開催することが不可能となります。このような事態の時のみ議決権が劇的に増加すれば、株主総会を開催することも可能となります。一定の事態が終息した場合は、普通の株式に戻ります。

 

3. 比重株

 

特定の株式について特別の権利を付けたものです。これは地位ではなく、株式自体に着目した株式です。特定の株式については、1株について100個の議決権を与えるなどの定めを行えます。これは誰が保有しても同様の効果があります。比重株は、属人的株式の一種であるため、登記もされず、かつ相続などで分散する可能性があります。

 

 

上記のような、さまざまな内容の株式を組み合わせ(数千通りにおよびます)ることで、経営者に相続が発生した場合にどのような事態が想定されるかをできるだけ、詳細に検討を重ね、それぞれのリスクを排除できるよう、その会社に合ったスキームを組んでいくことが可能となります。


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