遺産分割協議をする場合、および遺産分割協議書を作成する場合で、注意しなければならない点があります。
せっかくの遺産分割協議も、法律上の有効要件を満たしていないため無効となったり、取り消されたりすることがありますので、ご注意ください。
遺言による包括受遺者や相続分の譲受人がいるときは、それらの者も協議に参加しなければなりません。必ずしも、一堂に会して話し合う必要はありません。全員が合意した内容の協議書を、郵送などの持ち回りで署名・押印するほか、同内容の複数枚の協議書に、各相続人が個別に署名・押印する形でも有効です。
相続人の一部を除外してなされた分割協議は無効になりますので、戸籍の取得により、正確に相続人を確定していく作業が、まず必要となります。
相続人の中に未成年者がいるときは、未成年者の親権者が法定代理人として協議に参加することになりますが、その親権者も共同相続人である場合は、利益が相反することになりますから、このような場合は、家庭裁判所にその未成年者のために 特別代理人を選任してもらって、その特別代理人が分割協議に加わることになります。
ある財産が被相続人の遺産なのかどうか、相続人の間でもめることがよくあります。この点について話し合いがつかなければ、家庭裁判所の審判や通常の民事訴訟で争われることになります。なお、遺産分割の対象となるのは、被相続人が有していた積極財産(プラスの財産)だけで、相続債務(マイナスの財産)は対象とはなりません。したがって、遺産分割は、積極財産のみを対象とし、積極財産から消極財産を控除した残額についてのみ実施されるべきではなく、相続債務は別途に、相続債権者との関係として処理されることになります。
たとえば遺産分割協議で相続人の一人が被相続人の債務を全部引き継ぐときめたとしても、債権者である銀行などには承諾を得ない限りそれを主張できないのです。相続人は債権者からの相続分に応じた債務の請求を拒むことはできません。しかし、実務上、たとえば事業を承継する者が事業の借入金を引継ぐのが現実的ですし、不動産を取得する者がローンを引継いで支払っているケースも多いでしょう。誰が債務を引継ぐのかを合意することは、相続人の間では有効です。ただし、この場合には、債権者である銀行等に承認を得ておく必要があります。
遺産分割協議が調ったら、遺産分割協議書にその内容を記載しますが、その場合の書き方のポイントを押さえておいてください。
用紙の大きさは自由ですが、一般的にはA4、A3、B4サイズが多いです。縦書き、横書きも自由です。作成部数は、相続人の人数分、金融機関等への提出に必要な数分作成します。
共同相続人全員が署名し、印鑑証明書に登録されている実印押印します。また全員の印鑑証明書も添付します。
複数ページにわたるときは、相続人全員の実印ですべてのページ間に割印するか、袋とじをして割印してください。
署名の横にする実印の押印はにじんだり、かすれたりすると使えないことがあるため鮮明に押印する必要があります。
相続財産に不動産がある場合は、登記簿謄本どおりの所在や地番を正確に記載します。銀行の預金は、支店名・口座番号まで書いてください。
相続人が署名、押印した日付は、遺産分割の協議が成立した日か、あるいは最後に署名した人が署名した日付を記入するようにしましょう。複数枚で作成する場合は必ずしも同一の日付でなくともかまいません。
住所、氏名は、印鑑証明書を添付しなければならないので、印鑑証明書どおりに記載します。