相続財産のなかに株式がある場合、その株式も不動産や預貯金などと同様に、相続の対象となります。
相続人が複数いる場合、相続の対象となる株式は、預金債権のように、相続によって各相続人の法定相続分に応じて当然に分割されるわけではなく、遺産分割がなされるまでの間、相続人の準共有状態になります。
準共有状態の株式については、相続人間で遺産分割協議を行って、株式の帰属を決める必要があります。
遺産分割協議がまとまった場合、単独で取得するにしても、共同相続人が共有するにしても、株式を相続することになった相続人が会社に対して請求することで、株主名簿というものにその旨を記載しなければ、株式会社その他第三者に対抗することもできませんし、株主としての権利を行使することもできません。
株式の名義変更は、被相続人名義の株式が上場している株式か非上場の株式かによって、手続きが異なります。
まずはじめに、株券があるかないかを調査する必要があります。
株券不発行会社である場合には、会社に対して株主名簿記載事項証明書というものを交付してもらうことを請求します。
株券発行会社であっても、「株券不発行制度」を利用している場合は、株券の発行請求や発行を受けずに名義書換えを請求することができます。
株券を証券会社に預けている場合には、株券の出庫を請求せずに証券会社に対して、名義書換えを請求することができますが、相続人名義の専用口座の開設を要求されます。
もし、株券を喪失している場合には、株券喪失登録という手続きを会社に請求してから、株券の再発行をして名義書換えを請求することになります。
注意しなければならない点がいくつかあります。
まず、株券の保有が株式の電子化(平成21年1月5日)以前か、後かという点です。
次に、株式の電子化より以前から株券を所有している場合、株主自身が株券を保管していたか、証券会社の口座に預けていたかという点です。
株券電子化後、上場会社の株券は無効とされ、「証券会社」又は「発行会社が指定する金融機関」を通じて指定の口座を設けて電子的に記録する方法の手続きをしなければ株券は処分できないことになっています。
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株券電子化制度は、非上場株式には適用されていません。したがって、相続人が会社に対して名義書換えを請求します。
株券が発行されている場合、相続人が現実に株券を所持すれば、相続人自身で名義書換え手続を行うことが可能なので、株券の交付を受けます。共同相続の場合には、共同して名義書換え手続を請求します。
株券が発行されていない場合は、相続人は当然、株券の所持なくして名義書換え手続を請求することができます。
ちなみに、相続の対象が譲渡制限株式であっても、一般承継ということで会社の承認がなくても移転の効力は生じますが、第三者に対抗するためには名義書換えの手続きは必要です。